【症例】

トイプードル、３歳齢、避妊メス

【症状・経過】

生後6ヶ月ごろから皮膚の脂っぽさと痒みが出てきていた。生後1歳になった頃からかかりつけにて痒み止めが処方されていたが、脂っぽさは変わらなかった。

当院を受診する2ヶ月前からサイトポイントを使用しているが、効果なし。

週２回病院で処方された保湿系シャンプーで洗っているが、すぐにベタベタになってしまう。

写真では全身の毛が皮脂でベタベタになり、大量のフケが出ていることがわかります。胸やお腹、腕などはかゆみにより噛んでしまっており、脱毛も広がっています。

【診断】

脂漏性皮膚炎（本態性脂漏症）

【治療】

今回の症例は、犬種や発症年齢から脂漏性皮膚炎（本態性脂漏症）と診断しました。

本態性脂漏症は生まれつき皮脂腺の量が多いため、分泌される皮脂が多くなった結果、毛の

ベタつきが生まれます。また皮脂を餌に増殖するマラセチアが増えることにより皮膚炎が発生し、全身に痒みが見られるようになります。

この疾患のポイントはとにかく「皮脂を減らすこと」これに尽きます。当院にご来院される前に投与されていたサイトポイントは犬アトピー性皮膚炎の治療薬ですから当然効果はないですし、週２回シャンプーを実施されていたことは素晴らしいのですが、スキンケアのチョイスを間違っていたために効果のないものになってしまっていました。

治療プランはこちらです。

• 内服：痒み止め
• サプリメント：必須脂肪酸のサプリメント
• 自宅での入浴
• 週１回のご自宅でシャンプー
　　　　
• オイルクレンジング〜低刺激シャンプー〜掛け流し保湿

治療開始後、２ヶ月で以下のような変化が見られました。

１週間前にトリミングしていたので毛が短くなっていますが、被毛のベタつきはなくフケも出ていないことがわかりますね！

痒み止めの内服薬の中には皮脂の量を調整してくれるような効果を持つものがありますので、そちらをうまく使ってあげると管理がしやすくなります。またベタついているからといって、がむしゃらに洗ってしまうと必要な皮脂まで根こそぎ落としてしまい、洗浄後により多くの皮脂の分泌を促すような結果になることがあります。そのため、油っぽい子でもシャンプー後は必ず保湿を併用するようにしましょう。

皮膚病の治療は「改善させる期間」と「状態を維持する期間」に分かれます。状態を維持する期間を長くできなければ、結局元の状態に戻ってしまいますから当院では治療効果や副作用、費用のバランスも考えて継続できる治療をご提案しています。

当院では脂漏性皮膚炎だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。