category of skin disease犬種・猫種別皮膚病について

トイプードルの皮膚病

Skin disease by breed

トイプードルは、小型犬として非常に人気のある犬種です。一般的にはフランスが原産とされていますが、トイプードルの起源に関してはヨーロッパ各地に諸説があり、正確な起源は明らかになっていません。フランスでは、狩猟時に水鳥を回収する役割を担っており、そのために水に入る能力が高くなるように選択的に繁殖が行われました。日本ではもともとペットとして飼育されていましたが、2000年ごろからテディベアカットが流行し、その可愛らしい見た目から急激に人気が高まりました。

トイプードルの皮膚の特徴

抜けにくい毛

トイプードルは、シュナウザーと並んで、毛が抜けにくい犬種として知られています。これは毛の成長周期である「毛周期」と密接な関係があります。犬の毛周期は、成長期、退行期、休止期の3つの段階を繰り返しています。成長期には毛が伸び、休止期には毛が抜けやすくなります。一般的な犬種では、毛周期のバランスは成長期が約2~3割ですが、トイプードルではほぼ100%が成長期となっています。これが、抜け毛が少ない理由となっています。

油っぽい皮膚

トイプードルは、水鳥を回収する目的で作出された犬種であり、そのために水をはじきやすい皮膚を持っています。これは、皮膚の表面に皮脂を多く分泌していることにより実現されており、皮膚が脂っぽくなる原因となっています。この皮膚の特徴により、トイプードルは水に濡れても乾きやすく、また寒さにも比較的強い犬種となっています。 飼い主様がトイプードルの皮膚の特徴を理解しておくことで、適切なケアが行えます。例えば、皮脂の過剰な分泌により皮膚が脂っぽくなることを考慮して、適切なシャンプーとトリミングの頻度を調整することが重要です。ただし、シャンプーをしすぎると皮膚が乾燥し、炎症やかゆみの原因となることがありますので、適度な間隔を保ちましょう。また、抜けにくい毛の特性から、定期的なブラッシングが必要です。これにより、毛玉の予防や皮膚の健康維持が図られます。

トイプードルによくある皮膚病

  1. マラセチア皮膚炎(脂漏性皮膚炎)

    マラセチアは皮膚の常在菌の一種で、皮脂をエサにして増える酵母菌です。皮脂の分泌が多く、皮膚がベタベタしているほどマラセチアにとっては増えやすい環境になります。マラセチアが分泌する脂肪分解酵素や皮脂の分解により生じた脂肪酸が皮膚に浸透し炎症を起こさせることで、マラセチア皮膚炎になります。

    原因と治療について

    マラセチアが増殖する原因は、過剰な皮脂の分泌(脂漏症)、角化異常症、アレルギー性皮膚疾患、内分泌疾患、栄養不良、高温多湿の環境などが考えられています。アレルギーや内分泌疾患が原因となる場合はそれぞれの疾患にあった治療が必要となりますが、幼い頃から脂っぽく、マラセチア皮膚炎を繰り返している場合は本来の体質としての脂漏症を疑います。その場合は、生涯にわたり頻回のシャンプーや細やかなスキンケアが重要となってきます。

  2. 休止期脱毛症(内分泌疾患、毛周期停止)

    トイプードルの毛周期はほぼ100%が成長期で占められていますが、何らかの原因で休止期が増えてしまい、脱毛につながることがあります。これを休止期脱毛と言います。

    原因と治療について

    休止期脱毛状態を引き起こす疾患として、内分泌疾患やパターン脱毛症、毛周期停止などがあります。内分泌疾患は皮膚以外の部分にも症状が現れるため、積極的な治療が推奨されます。パターン脱毛症や毛周期停止は内服薬やサプリメントでの治療が提案されていますが、主な症状が痒みのない脱毛症であるため、「無治療」というのも選択肢の一つとなります。ただし、脱毛を起こした部分は紫外線など外部からの刺激に弱くなるため、二次感染を起こしやすくなったり、ドライスキンになることがあります。服を着せてあげるなどのケアが大切です。

  3. 肉芽腫性脂腺炎

    脂腺炎は詳しい病態が明らかになっていない皮膚病です。国内の好発犬種はトイプードル、秋田犬、スタンダード・プードル、サモエドなどが挙げられます。秋田犬とスタンダード・プードルでは遺伝の異常も報告されています。分厚い固着性のフケと脱毛を特徴とし、進行すると全身に拡大していきます。被毛の状態も悪化し、毛艶が悪く、折れやすくなります。

    原因と治療について

    犬種や症状から脂腺炎が疑われた場合の最も有効な検査は皮膚病理検査です。病理検査によって、脂腺領域に炎症細胞の集まりがある場合や脂腺の退縮および消失が認められると脂腺炎と診断することができます。脂腺炎の治療で効果が期待されるのは、シクロスポリンの内服です。またビタミンAを補充してあげることで症状が改善することがあります。

トイプードルの症例集

    • 4歳齢 

      避妊メス
    • ・病名

      脂腺炎

    • ・症状

      背中を中心に重度のフケが出ていたため、検査を希望して来院された。このタイプのふけは一般的な検査ではなく、病理検査を行うことで診断に結びつくことが多い。今回のケースでも病理検査を行うことで確定診断がつき、適切な治療を行うことができた。

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    • 6歳齢 

      避妊メス
    • ・病名

      脂漏性皮膚炎

    • ・症状

      アポキルの内服と月1回のシャンプーで治療していたが、症状が改善しないため来院された。皮膚検査の結果、マラセチアの増殖を認めたためシャンプーでのマラセチア治療を行った。それと並行して、ぬり薬でステロイドを使用することにより、症状が強かった四肢でもきれいな発毛を見ることができた。

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