猫のアトピー性皮膚症候群
2023.12.27【症例】
雑種猫、3歳齢、去勢オス
【症状・経過】
ちょうど1歳になった頃に首元に脱毛が見られ、かかりつけにてステロイドが処方され、一時的に症状が改善。その後、別の病院にかかるようになり、同じようにステロイドを使用されていたが、副作用の懸念から内服を変更した。それから症状が悪化してしまった。
写真では頭部の引っ掻き、腹部のなめこわしによってかさぶたができたり、出血してしまっています。
【診断】
猫アトピー性皮膚症候群
【治療】
今回の症例は、症状の分布やこれまでの経過から猫アトピー性皮膚症候群と診断しました。
犬アトピー性皮膚炎と似た名前だけど違うの?と思われた方もいるかもしれません。猫アトピー性皮膚症候群は人や犬のアトピーと異なり、今のところ発生機序などが完全に解明されていないため、このような呼び方になっています。
診断方法は犬と同様で寄生虫や感染を確認してから食事の影響を評価します。これらの検査で異常がなければ、猫アトピー性皮膚症候群と診断します。
今回も皮膚検査ののち、フードのトライアルを6週間行いましたが症状に改善が見られなかったため、猫アトピー性皮膚症候群として治療を開始しました。
今回の治療プランはこちらです。
- 内服:痒み止め
- 外用剤:ステロイドの塗り薬(治療初期の1ヶ月限定)
治療開始後、3ヶ月で以下のような変化が見られました。
皮膚の赤みが減り、完全に毛が生え揃っています!体を掻いたり、舐めたりすることはありますが、普通の猫のグルーミングと同程度とのことでした。
今回使用した痒み止めは以前の病院で処方されていたものと全く同じです。違うところは使う用量です。以前の病院ではびっくりするくらい少ない量で処方されており、適切な量まで増量したところ、今回のように良好な管理ができるようになりました。
治療開始初期は1日1回で投薬していましたが、現在は完全にお薬を中止し再発がないか経過を見ています。
皮膚病の治療は「改善させる期間」と「状態を維持する期間」に分かれます。状態を維持する期間を長くできなければ、結局元の状態に戻ってしまいますから当院では治療効果や副作用、費用のバランスも考えて継続できる治療をご提案しています。
当院では猫アトピー性皮膚症候群だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。