case study病例集

【ミニチュアダックスフンドの甲状腺機能低下症】

ミニチュアダックスフンドの甲状腺機能低下症

2023.4.20
Before
After

【症例】

ミニチュアダックスフンド、4歳齢、去勢オス

【症状・経過】

生後2歳ごろからお腹や耳をよく痒がるようになった。かかりつけの病院では、アポキルとステロイドの塗り薬が処方され、薬を使用中は改善していた。
その後は数ヶ月おきに症状が再発していたため、同じ治療を繰り返し行っていた。
当院を受診される数ヶ月前から鼻や耳の脱毛が目立つようになってきた。

写真では、鼻梁部(鼻すじ)、耳介の外側に脱毛があり、お腹の皮膚は黒ずんでいることがわかります。

【診断】

甲状腺機能低下症
マラセチア皮膚炎

【治療】

今回の症例は症状の経過と当院での検査結果から甲状腺機能低下症とそれに付随するマラセチア皮膚炎と診断しました。

マラセチア皮膚炎は皮脂の量が増えることで発生しますが、ではなぜ皮脂が増えてしまったのかを考える必要があります。
今回ヒントになるのは、鼻と耳の脱毛です。この部分は、一般的なマラセチア皮膚炎で症状が出る場所ではありません。ホルモン疾患のほか、血流障害による虚血や日光など紫外線の影響を考える必要があります。

今回は4歳と若めの症例でしたが、原因追及を行うため血液検査を行ったところ、甲状腺から出るホルモン濃度が少ないことがわかりました。

そのため、甲状腺ホルモンをお薬で補充し、スキンケアとしてマラセチア対策のシャンプーを使用していただくことにしました。

治療開始後、2ヶ月で以下のような変化が見られました。

鼻や耳の毛が薄くなっていた部分はかなり毛が生えてきています。ホルモン疾患で脱毛する場合、発毛までに数ヶ月から半年ほど時間がかかることもありますから、今回のケースはかなり早く反応してくれた方だと思います。
また適切なスキンケアを行った結果、お腹のマラセチアが減少し皮膚の黒ずみが目立たなくなりました。
甲状腺機能低下症は、投薬を中止すると元に戻ってしまうタイプの疾患のため、今後も継続してお薬を飲ませていく必要があります。シャンプーなどのスキンケアは皮膚の状態を見ながら、実施のペースを調整することは可能です。

皮膚病の治療は「改善させる期間」と「状態を維持する期間」に分かれます。状態を維持する期間を長くできなければ、結局元の状態に戻ってしまいますから治療効果や副作用、費用のバランスも考えて継続できる治療をご提案しています。
当院では栄養性脱毛症だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。

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