トイプードルの脂漏性皮膚炎
2023.4.20【症例】
トイプードル、12歳齢、去勢オス
【症状・経過】
若い頃から外耳炎を繰り返しており、その都度点耳薬を処方してもらって、症状をおさえていた。
当院を受診する1年半ほど前からは皮膚の状態が悪化してきており、全身に赤みと脱毛が見られるようになった。かかりつけではアポキルが処方されているが、明確な効果は感じていない。
写真では顎下や首や指先に赤みと脱毛が見られます。
【診断】
脂漏性皮膚炎
【治療】
今回の症例は犬種や症状の発生時期、初期症状から、脂漏性皮膚炎と診断しました。
脂漏性皮膚炎では痒みを伴うことが多いため、痒み止めを使ってあげることは大切です。
しかしもっと大切なのは、過剰に分泌されてしまう皮脂をいかにうまく除去できるかというところにあります。
全身の赤みが強いということはそれだけ炎症が強く出ているということです。これくらい赤みが強い場合は、初期導入としてステロイドを使用しその後は他の免疫抑制剤などに切り替えていった方が長期的にはうまく管理できることが多いです。
今回も最初はステロイドでスタートし、皮膚の赤みや痒みがおさまった時点で他のお薬に切り替えを行っています。それに加えて、毎日の保湿と毎週のシャンプーも実施していただきました。
また高齢から症状が強くなってきているため、食事の影響を除外するためにフードも食物アレルギーを意識したフードに変更していただきました。
治療開始後、4ヶ月で以下のような変化が見られました。
大部分で毛は生えてきていますが、まだその下の皮膚には赤みが残っているところが見えます。今後はこれ以上赤みが悪化せず、脱毛もしない「いいバランス」を見つけていく作業が必要となります。そのために、段階的に薬の投薬量を減らして経過を追っていく予定となっています。
皮膚病の治療は「改善させる期間」と「状態を維持する期間」に分かれます。状態を維持する期間を長くできなければ、結局元の状態に戻ってしまいますから治療効果や副作用、費用のバランスも考えて継続できる治療をご提案しています。
当院では脂漏性皮膚炎だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。