case study病例集

【チワワの犬アトピー性皮膚炎】

チワワの犬アトピー性皮膚炎

2023.4.20
Before
After

【症例】

チワワ、9歳齢、去勢オス

【症状・経過】

生後3歳ごろから体の痒みがあり、夏場に悪化することが多く、冬場は症状が落ち着いていた。当院を受診する2年ほど前から季節を問わず重度の痒みがあり、かかりつけの病院ではアポキルが処方されていたが、まったく効果がなかった。

写真では首や背中の広範囲に脱毛があり、特に首から前肢にかけては皮膚が非常に厚くなっていることがわかります。

【診断】

犬アトピー性皮膚炎

【治療】

今回の症例は症状の発生時期やこれまでの経過から、犬アトピー性皮膚炎と診断しました。
犬アトピー性皮膚炎は遺伝、環境、生活スタイルなど様々な要因が絡み合って起こる複雑な疾患です。

アトピー性皮膚炎の初期であれば、アポキルだけでもコントロールはできるかもしれませんが、ここまで悪化してしまうとアポキルでは太刀打ちできません。
それはなぜか?

アポキルは「痒みを止める薬であり、炎症を止める薬ではない」からです。

この子のように皮膚症状が重度になるほど、併発している皮膚炎も重度になっています。そのため、痒みだけをアポキルで止めてあげても皮膚の炎症を止めることができないため、「高い薬を使っているのに効かない」といった結果になってしまうわけです。

これくらい悪化してしまったアトピー性皮膚炎の治療初期はステロイド一択だと個人的には考えています。アポキルやサイトポイントなどのいい薬はありますが、それは症状が安定してから変えていけばO Kです。
というわけで、この子はステロイドの内服を中心に、サプリメントやスキンケアを徹底して行っていただきました。

治療開始後、3ヶ月で以下のような変化が見られました。

まだ背中の一部が生えそろっていませんが、かなりの範囲が新しい毛で覆われています。現在はステロイドを数日に1回の頻度まで減らすことができており、副作用はかなり抑えられています。ここまで少ない回数での投薬であれば、ステロイド特有の副作用が出る可能性は非常に小さいと言えるでしょう。
今後はもともと使っていたアポキルへの変更のタイミングを図っていく予定です。
ステロイドについては、飼い主様の話を聞くとまず第一に聞こえてくるのが副作用に対する懸念です。確かにステロイドは使用しないならその方がいいですし、副作用を気にする必要もありません。ですが、動物医療でステロイド以外の投薬に頼るということはその分、治療費がかなり高額になることを意味します。皮膚病の多くは、この治療費が生涯にわたってかかってくるため、その辺りの費用負担に全く問題がない方がいれば、そうでない方もいらっしゃいます。
皮膚病の治療は「改善させる期間」と「状態を維持する期間」に分かれます。状態を維持する期間を長くできなければ、結局元の状態に戻ってしまいますから治療効果や副作用、費用のバランスも考えて継続できる治療をご提案しています。
当院では犬アトピー性皮膚炎だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。

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