トイプードルの脂漏性皮膚炎
2023.3.11【症例】
トイプードル、8歳齢、避妊メス
【症状・経過】
若い頃から四肢を舐めることはよくあったが、治療が必要なほど皮膚の状態が悪くなることはなかった。
当院を受診する1年前から皮膚の状態が悪化し、病院に通院するようになった。アレルギー検査を実施しフードの変更、ステロイドやアポキルの内服を試したが、改善が見られなかった。
写真では首、四肢、お腹の毛がほとんど脱毛してしまい、強い赤みと大量のフケが出ています。残っている背中の毛も皮脂でベタベタしており、皮膚の環境が悪いことが予想できます。
【診断】
脂漏性皮膚炎
【治療】
今回の症例は犬種やフケを主体とする皮膚炎などから脂漏性皮膚炎と診断し、治療を開始しました。
皮膚の上でマラセチアとブドウ球菌ともにかなりの量が増殖していたため、治療導入初期は積極的に病院での薬浴を行い、皮膚の清浄化を徹底しました。
またこのような慢性的な皮膚炎で皮膚の肥厚が重度であり、脱毛の目立つ症例ではステロイドではない痒み止めを使用すると著効することが多いのですが費用の関係からそれらの薬を使用することができなかったため、ステロイドを中心にして治療プランを組みました。
治療開始後、3ヶ月で以下のような変化が見られました。
かなり大部分に発毛が見られるようになり、フケの量も劇的に減少しています。またステロイドについても3日に1回の投薬まで頻度を減らせているため、一般的に言われているようなステロイドの長期投与による副作用は今のところ、認めていません。
ステロイドは飼い主様の話を聞くとまず第一に聞こえるのは、副作用に対する懸念です。確かにステロイドは使用しないならその方がいいですし副作用を気にする必要もありません。ですが、動物医療でステロイド以外の投薬に頼るということはその分、治療費がかなり高額になることを意味します。皮膚病の多くは、この治療費が生涯にわたってかかってくるため、その辺りの費用負担に全く問題がない方がいれば、そうでない方もいらっしゃいます。
皮膚病の治療は「改善させる期間」と「状態を維持する期間」に分かれます。状態を維持する期間を長くできなければ、結局元の状態に戻ってしまいますから治療効果や副作用、費用のバランスも考えて継続できる治療をご提案しています。
当院では脂漏性皮膚炎だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。