case study病例集

【チワワの副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)】

チワワの副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

2023.3.11
Before
After

【症例】

チワワ、12歳齢、避妊メス

【症状・経過】

当院を受診する1ヶ月前から左右の腰部分にカサカサができているとトリミングで指摘された。かゆみはなかったが、かかりつけではステロイドが処方され、治療を行ったものの改善は見られなかった。
ここ数ヶ月ほど、1日500ml以上の水を飲むようになったとのこと。

写真では、確かに腰の横側に大量のフケが付着していますが、よく見てみると体の横側全体の毛が薄くなり、色も白っぽくなっていることがわかります。
またこの子は体重が5kgくらいだったため、1日に500mlも水を飲むのは明らかに異常でした。

【診断】

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)による皮膚の角化障害

【治療】

今回の症例は「左右対称性の痒みのない脱毛」「高齢からの発症」「大量の水を飲む」という点からまず、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)を疑いました。
ここでのポイントは多飲多尿の症状を初めから飼い主様が稟告で教えてくれていたわけではないということです。この子の皮膚の状態を確認させていただき、問診をとる中でこちらから「水をたくさん飲んだりするようになっていないですか?」とお伺いしたところ、「そういえばここ半年くらい飲む量が増えた気がする」と教えていただけました。
ですので、そもそも今回の皮膚の状態を見て内分泌の異常が関与しているかもと思えなければ、おそらく副腎皮質機能亢進症の検査も行うことができないでしょう。

血液検査とエコー検査で副腎皮質機能亢進症の確定診断をつけることができたため、過剰に分泌されているホルモンを抑制するお薬を使っていただきました。

治療開始後、5ヶ月で以下のような変化が見られました。

治療開始5ヶ月後には体の左右にしっかりとした毛が生えてきており、毛の色も元々のきれいな茶色に戻ってきています。

現在は副腎皮質機能亢進症をコントロールするお薬を飲みながら、皮膚のケアとしてご自宅で入浴をしていただいています。
皮膚病の治療は「改善させる期間」と「状態を維持する期間」に分かれます。状態を維持する期間を長くできなければ、結局元の状態に戻ってしまいますから治療効果や副作用、費用のバランスも考えて継続できる治療をご提案しています。
当院では副腎皮質機能亢進症による脱毛だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。

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