トイプードルの脂漏性皮膚炎
2022.6.22【症例】
トイプードル、7歳齢、去勢雄
【症状・経過】
おうちにお迎えした頃から皮膚のベタつきやフケが目立っていた。3歳になる頃には痒みが激しくなった。当院受診時は病院で処方されたシャンプーで月1回洗浄を行っているだけだった。
首や胸、お腹、四肢に赤みと脱毛、象皮様に変化してしまった皮膚が見られます。
【診断】
脂漏性皮膚炎
【治療】
脂漏性皮膚炎の基本的な治療管理は、過剰に分泌される皮脂をいかに少なくしてあげるかがポイントです。今回は皮膚を餌にして増殖するマラセチアが過剰に増えていたため、そちらのケアも同時に行うことになりました。
まずはマラセチアの増殖を抑えるシャンプーと皮脂の量を減らすためにクレンジングオイル、シャンプー後のトリートメントを使ってスキンケアを行いました。
飼い主様の努力の成果も出て、シャンプー療法のみでマラセチアの増殖は抑えることができました。
しかしながら、それでも痒みがある程度残っていたため、お薬を併用することにしました。今回、選択したのはステロイド剤です。ステロイドに対して嫌な印象を持たれている飼い主さんは多いです。ですが、僕自身はステロイドがそこまで悪い薬だとは思いません。正しい知識をもって、皮膚の症状と副作用のバランスをとりながら使っていけば、非常に有効な治療手段になります。また、ステロイドには脂腺の増生抑制効果があると言われており、脂漏体質の子の治療にはとても効果的です。
もともと実施していたシャンプー療法に加え、ステロイドの内服薬と保湿剤を用いてのデイリーケアを追加しました。
治療開始から2ヶ月半後の写真です。
まだお腹の黒ずみは残ってしまっていますが、フケや痒みは特になくいい状態を保てています。
現在は週1回のシャンプーと、2日に1回のステロイド剤の内服で治療を継続しています。ステロイドの体内での持続時間は個体差が大きく12〜48時間ほどと言われています。そのため、48時間おきに1回の頻度まで投薬を減らすことができれば、体への負担はかなり軽くすることができるんですね。
今後も痒みなく快適な生活を送れるようにサポートしてあげたいと思います。
当院では脂漏性皮膚炎だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。