case study病例集

【紀州犬のアトピー性皮膚炎+甲状腺機能低下症】

紀州犬のアトピー性皮膚炎+甲状腺機能低下症

2022.6.22
Before
After

【症例】

紀州犬、6歳齢、去勢雄

【症状・経過】

3歳になった頃から夏季に痒みや皮膚の脱毛を認めるようになった。治療を開始して数年の間は冬場になると症状が落ち着いていたため夏場はアポキルを使用し、冬には内服治療の中止していた。しかし当院来院時は冬にもかかわらず症状が悪化しており、アポキルを飲んでいても痒みがおさまらない。

写真では鼻筋や前肢、腹部に脱毛や赤み、色素の変化が強く出ていることがわかりますね。

【診断】

犬アトピー性皮膚炎+甲状腺機能低下症

【治療】

今回の症例のポイントは、「これまでは夏だけに見られた症状が冬になっても出るようになってしまった」点です。

もともとアポキルで良好に症状がコントロールできていて、症状の悪化に季節性があったことから「犬アトピー性皮膚炎」を持っていたことはかなり疑わしいです。

この紀州犬の子は体重が16kgほどあり、中型犬に入ります。それくらいのサイズの子が6歳になってから季節のない痒みが出始めたとすると、アトピー以外の疾患が併発している可能性を追求しないといけません。

全身に強い痒みがあるため、以下のようなことを調べていく必要があります。・

・菌やカビの二次感染、寄生虫の感染はないか

・ホルモン異常や腫瘍性疾患など全身に影響を与える疾患はないか

今回はこれらを調べるために皮膚科検査の他、血液検査、ホルモン検査、レントゲン検査などを実施しました。皮膚検査では「マラセチア」が重度に増殖しており、血液検査と超音波検査で甲状腺の機能が低下していることが判明しました。

そのため、今回の診断は「犬アトピー性皮膚炎+甲状腺機能低下症に伴うマラセチア皮膚炎」としました。

全身の痒みに対してはこれまでの治療実績があるアポキルを用いました。また甲状腺機能を補うため、ホルモン剤を内服していただくことになりました。マラセチアは甲状腺機能が低下したことによる皮脂分泌の増加の影響で増えているため、スキンケアによって皮脂をコントロールしてあげれば自然に減っていきます。

治療は「アポキル+甲状腺ホルモン剤+皮脂を除去するシャンプー+デイリーケア保湿」としました。

治療開始後、2ヶ月でこんなにきれいになりました!

顔の毛並みが整ってきているのは、甲状腺ホルモンを補充して血中濃度が安定した効果が出ているためです。胸からお腹には毛が全くない状態でしたが、飼い主様の適切なケアと投薬のおかげで、フサフサの毛が戻ってきました!

もともとうまく管理できていた症状が突然コントロールできなくなった時は、なぜ悪化したのかを考えて可能性を必ず追求しないといけません。今回の場合は「マラセチアの増殖」という悪化要因があり、さらにその根本原因として「甲状腺機能低下症」がありました。マラセチアと甲状腺機能低下症の両方にアプローチしないとうまく改善に導くことは難しかったでしょう。

原因を追求して症状が悪化した理由が判明すれば、短期間で症状を改善されることも期待できます。

当院では犬アトピー性皮膚炎や甲状腺機能低下症だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。

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