イタリアングレイハウンドの犬アトピー性皮膚炎
2022.9.11

【症例】
イタリアングレイハウンド、7ヶ月齢、オス
【症状・経過】
生後半年から顔を中心に痒みが出てきて、気温が上がるにつれて、どんどん症状が悪化していった。
初診時は院内でも手足で顔を掻く仕草が見られていました。
写真では眼や口の周り、足先に赤みや脱毛が見られます。



【診断】
犬アトピー性皮膚炎
【治療】
生後半年からの発症ということで若い子に多い痒みの疾患を想定する必要があります。
今回は感染、アレルギー、精神的な未熟を柱に原因を検討していきました。検査の結果、感染は見つかりませんでした。
次に行うべきなのは食物アレルギーを診断するために食べているものを変えることです。除去食試験と言います。ここでのポイントは、今まで食べたことのない成分で作られているフードを選ぶという点です。
食べている食品が把握できたところで2ヶ月間食べてもらうフードを選んでいきます。また、フードを変更するだけでなく使う食器も替えていただくことをお勧めしています
アレルギー検査の血液検査を希望される飼い主様がいらっしゃいますが、この検査では検査結果がそのまま確定診断にはならないということに注意しないといけません。陽性の判定が出ていても実際にその食べ物が症状を起こしているかはわかりませんし、陰性のものでも食べると症状が出ることがあります。また、検査のリストに載っていない食品に対してアレルギーを持っている可能性もあります。ですから、私はこの検査を積極的にお勧めはしていません。
最近では市販のプレミアムフードに肉、魚介、野菜、果物とあらゆるジャンルの食材が入っていることが多く、どうしてもこれまでに食べたことのない食材が見つけられないという時には、フード選びの情報を得るために検査をご提案しています。
また、食物アレルギーの関与の可能性が低くアトピー性皮膚炎の疑いが強まった時点で、環境抗原に対するアレルギー検査を実施することはあります。アトピー性皮膚炎は「環境アレルゲンに反応した痒みを引き起こす」病気ですので、原因を特定することができれば治療の選択肢を増やすことができる可能性があるからです。
今回はフードの切り替えでは皮膚の症状に改善がなかったため、犬アトピー性皮膚炎と診断して、治療を行うことにしました。
治療は痒み止めだけでなく、サプリメントと入浴などのスキンケアも併用していただきました。
治療開始後、1ヶ月ほど経過した時の写真がこちらです。



眼や口の周りの赤みがなくなり、足先の毛が生えそろってきていますね!今回の治療ではサプリメントや入浴を行うことで治療のメインである痒み止めを通常量の半分以下まで減量することができました。
当院では犬アトピー性皮膚炎だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います。