シーズーの犬アトピー性皮膚炎
2022.6.21【症例】
シーズー、4歳齢、メス
【症状・経過】
若齢から外耳炎を繰り返しており、もとの病院では点耳薬をもらっていた。当院受診の3か月前から全身に痒みと赤み、脱毛が目立つようになり、ステロイドやアポキルといった痒み止めや抗生剤を処方されていたが症状が改善しない。
また病院で処方されたマラセブシャンプーで、月2回の洗浄を行っていた。
写真では耳や首、胸、腹部に脱毛、赤み、フケ、皮膚の肥厚が見られる。
【診断】
犬アトピー性皮膚炎を基礎とするマラセチア増殖に伴う皮膚炎の悪化
【治療】
治療は内服薬を中心に、シャンプーや保湿を見直すことにしました。マラセチアは皮脂を餌にして増殖するため、スキンケアによる皮脂のコントロールが重要となります。そこでマラセブではなく、クレンジングと皮脂の除去を目的としたシャンプーに変更しました。また余分な皮脂が分泌されないように毎日のスキンケアをご家庭でも実施していただきました。
耳や胸は慢性的な皮膚炎と外耳炎により、皮膚がかなり分厚くなってしまっていましたので、塗り薬のステロイド剤も併用して、皮膚を薄くしながら皮膚炎の管理を行うことになりました。ステロイドは炎症を効率的に取ってくれるだけでなく、皮膚を薄くする作用があります。この作用を利用して短期間で皮膚を元の状態に戻すわけですね!
治療開始後、3か月での写真です。
首やお腹の皮膚は赤みがなくなり、きれいな毛が生えてきていますね!
この子は食事をこれまで食べたことのなかった成分で製造されているフードに変更して2ヶ月間のトライアルを行いました。その結果、皮膚の症状に変化が見られなかったため、食物アレルギーが関与している可能性は低いと判断しました。
そのため最終的な診断は「犬アトピー性皮膚炎」となりました。
犬アトピー性皮膚炎の初期症状であれば、ステロイドやアポキルの内服だけでもコントロールは可能かもしれません。ですが、アレルギー体質の子たちはもともと皮膚のバリア機能が低下していますので、内服だけでなく体の内外からのスキンケアを組み合わせて皮膚の機能を高めていかないとずっと内服に頼ることになってしまいます。
当院では犬アトピー性皮膚炎だけでなく、年間数百症例にのぼる様々な皮膚疾患を診察、診断しています。そのため、通常の治療で良くならない皮膚病でも違った角度から治療プランを立て直すこともできますので、慢性的なわんちゃん、猫ちゃんの皮膚病でお困りの飼い主様は、一度ご相談いただければと思います